BUSINESS DIARY
自転車保険(1)
2018-03-06
先日、後タイヤの空気が抜けてしまったという女性のお客さんが来店されました。
「息子が通学で乗っている自転車なんですよ」とお客さん。
空気が抜けたタイヤを見れば、地面との接地面が激しく擦り減っているため、パンク修理ではなくタイヤ交換が必要な状態でした。
私は、お客さんからタイヤ交換の承諾を得て、作業を始めました。
車体から後ホイールを外し、新しいタイヤ・チューブに交換。最後に後ブレーキ調整をしている時、「異常」に気が付きました。
後ブレーキレバーの引き代を調整するためにワイヤーを固定。
ところが、レバーを握ると「フニャ~」とした変な感覚です。
「なんでやねん」とレバーの方を見てビックリ。レバー基部に割れが生じていたのです。
ほとんどブレーキが機能していない状態で、これまで息子さんは通学していたことになります。
その事をお母さんに伝えると、「えーっ、あの子、何にも言わなかったわ」と驚かれた様子で言われました。
その後、ブレーキレバー交換の承諾も得て、その自転車は安全・安心な状態になりました。
今日、ある新聞社から取材を受けました。
数週間後に発行される紙面に、自転車保険の特集を組むにあたり、自転車小売店が扱うTSマークについて教えてほしいという依頼でした。
来店された記者さんは、開口一番、「TSマークの補償に驚きました。」と私に言います。
つまり、人身事故で慰謝料や治療費を請求された場合の補償の条件が厳しいという内容について驚かれたとのこと。
この度の取材を受けるにあたって、私はその点について指摘される事を予想していました。
「実は、TSマークは、保険代理店が扱う保険とは全く違うんですよ」と私。
「そう言い切ってしまってよろしいんですか?」と記者さん
自転車保険(2)
2018-03-08
「この広告(写真)を見て下さい」
私は、新聞に掲載されていたTSマークの広告を差し出しました。
「通常の保険広告と違って、どこにも保険料金が記載されていません。保険という文字についても、カッコ内に小さくあるだけです。」
「そうですね」と広告を見る記者さん。
保険という商品を販売するには、資格が必要です。さらに、代理店として登録もしないといけません。
資格も代理店登録も無い場合、保険の募集、選択に関する内容の説明をすれば違法です。
「では、TSマークって何ですか?」
私は、驚く記者さんに次のように説明を続けました。
TSマークは、自転車の「安全と安心」を提供するサービスです。
その料金は、自転車の「点検整備の対価」です。
自転車を扱う場合、自転車技士、自転車安全整備士という 2つの資格があります。
そのうちの後者の資格を有する者が、自転車を点検整備して、「安全な普通自転車」と確認した時に貼るシールが「TSマーク」です。
そして、そのシールに保険が「付帯」しているのです。
TSマークには、赤と青の 2種類があります。
私の店がTSマークを扱えるように申請した時、青赤どちらか 1つを選択することになって、私は赤のTSマークを選択しました。
だから、私の店では、青色のTSマークは扱うことが出来ません。
つまり、私の店では、お客さんも赤色のTSマークしか選択できないため、保険の資格のない私が、付帯している保険の内容を説明しても違法ではないのです。
「でも、補償 1億円ってありますが、それは、死亡・重度後遺障害に限ってのこと。2週間以内の入院で全治した人身事故に対しての補償がないのは、他の保険と比較して損なのでは?」
自転車保険(3)
2018-03-09
TSマークと自転車にかかわる保険を補償内容だけで比較するのは、「お得」勘定というものです。
大切なのは、保険を金銭の損得勘定で選択するのではなく、「なぜ加入するのか?」という動機で選択すべきなのです。
私は、先日のブレーキレバー交換修理について話しました。
「この前、高校生の息子さんの自転車をお母さんがパンク修理で持って来られたんですよ。
その修理中に、私は後ろのブレーキが機能していないことを見つけましてね。
急遽、タイヤと一緒にブレーキレバーも交換させていただきました。」
私は、さらに熱く語り続けました。
お客さんは 、パンクなどタイヤのトラブルで走れなくなってから、自転車を店に持って来られます。
つまり、多少調子が悪くても、ペダルを踏んで走れる状態なら、たとえそれがブレーキの不具合であっても、フレームが曲がっていても、なかなか修理に持ってきてもらえません。
例えば、この日記の2017年 3月12日に登場する自転車。
そのお客さんは、タイヤがパンクしてしまったので来店されました。
しかし、私が見ると、その自転車はフロントフォークが曲がっていたのです。
記者さんは、メモを取る手をとめて、私の話に聞き入っておられます。
「問題は、昨今の自転車があまりに安価なため、最低限の修理しかやってもらえないことです。」
私は、さらに話を続けました。
たかが自転車ですが、公道を走る軽車両です。
「保険に入っていないと不安」「保険に入っているから大丈夫」ではなく、事故を起さないようにする日頃からの意識と、しっかり点検整備された安全・安心な自転車であること、その 2つが大切なのです。
例えば、「入院・通院の補償が充実した医療保険に加入しているから安心」ではなく、「日頃から生活習慣に気を付けて、定期的な健康診断も受けて下さいね」という意味です。
自転車にかかわる保険は、人身事故が起きてしまった後、被害者の救済と保険加入者の金銭的負担の軽減が目的です。
それに対して、TSマークは、整備不良に起因する自転車の交通事故を予防し、さらに、自転車の点検整備、さらに交通安全に対する意識を向上させるのが目的。
つまり、悲惨な事故を一件でも少なくするための制度なのです。
「TSマークは事故の前、保険は事故の後」
そのようにメモ書きのペンを走らせる記者さんへ、私から最後のお願いをしました。
世間の人の自転車に対する安全の認識は低すぎます。
自転車屋である私のブログの読者は、100人もいません。
でも、あなたは文屋。
あなたが紙面に書く文章は、何千人、いや、何万人もの読者の目に触れます。
どうかお願いしたいのです。
TSマークは、なぜあるのか。
TSマークの本当の目的。
そして、整備不良の自転車に乗る行為が、交通事故の加害者になるかもしれない事を読者の皆さんにしっかりと伝えて下さい。
募金箱
2018-03-13
のんびりした昼下がり、ふと外を見ると、大きな旅行バッグを持ったおばあさんが店の前で立ち止まりました。
私は直ぐに表へ出迎えたところ、「疲れた」と一言、バッグをその場に置いて立ち去られました。
「えっー!」と私は慌てて重いバッグを手に取って、おばあさんの後を追いかけました。
直ぐに追いついて、「あの、このバッグ…」と言うと、
「しんどいから置いたんや。公園にパンクした自転車置いとるから、後で持ってくる」と、おばあさんはバッグを受け取ってくれません。
もう何が何だか分からない状況で、私はおばあさんのバッグを持ったまま店に戻るしかありませんでした。
それから、おばあさんを信じて待ちました。
「本当に帰ってきてくれるだろうか。帰って来なかったら、この大きなバッグどうしよう」と、かなり不安な気持ちです。
私は、おばあさんが立ち去った方向を何度も何度も見ました。
やがて、タイヤを持ち上げて自転車を押してくるおばあさんの姿が見えてきました。
直ぐにおばあさんのところまで駆け寄り、自転車を預かって店の中へ持ち込みました。
後タイヤの空気が抜けたおばあさんの自転車は、20インチの折り畳み。
前後に荷物が満載されて、それらはテント野宿の道具一式ということでした。
各部はかなり傷んだ状態で、京都から走ってきたというもの、ある意味説得力があるように思えました。
パンク修理の作業に集中するように努めましたが、
「歳はとりたくない。もう84歳になってもた。」と、おばあさんはいろいろなことを話します。
結局、チューブに穴は見つかりませんでした。
それから、会計になりました。
「800円です」と私。
「えっ、安いやんか! 普通は 2000円するで」
おばあさんはそう言って、私に1000円札を手渡し、お釣りは受け取ってもらえませんでした。
今日、店に募金箱を用意しました。
おばあさんのお釣り200円を入れました。
おでかけ
2018-03-14
うららかな春の定休日、妻を誘って、奈良・明日香村へドライブ旅行に行ってきました。
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点検
2018-03-19
開店一番、スタンドバネを取り付ける作業を受けました。
そのついでに自転車を軽く点検してみれば、ブレーキケーブルが激しく傷んでいるのを発見。
お客さんの了承を頂いて、新品に交換しました。
雨が本格的に降る午後、 TSマークの依頼を受けました。
お客さんに付帯保険の内容を説明してから、自転車の点検整備の作業にかかります。
まず、後反射板が欠落していたので新しい商品を取付ました。
内装 5段の後変速ワイーヤーが大きく伸びていたので、アジャスターを回して直します。
ヘッドの上ナット、後ハブ軸ナットが緩んでいたので、グイっと締めます。
ベルトドライブのため、アルミフレームのチェーンステイ、シートステイの接合部を見ると、隙間が…
その部分のボルトも大きく緩んでいたので、ロックタイト塗って締めました。
点検整備は大切です。
続く時は…
2018-03-20
左右のハンガーワンが緩んで、クランクがグラグラになっている自転車が多いように思います。
そもそも、緩んではいけない部品です。
中には、末期的な症状になって来店される場合があり、いつも大変なことになります。
今日は、朝から 2台連続でクランクがグラグラになった自転車が持ち込まれました。
続く時は続くものだなぁと思いました。
人力車
2018-03-24
人力車のスポーク交換をしました。
特大サイズのスポークとニップルは、もちろんお客さんの持込みです。
「すごい大きさやなぁ」と驚きながら作業を開始。
「さて、ニップル回しは?」と思ったところでサイズを見れば、5mmのスパナがピッタリはまりました。
振れ取りの作業をしましたが、超幅広のリムは、スポーク一本無い程度ではビクともしていません。
そこで、専用ケージでスポークテンションを合わせて、作業は無事完了。
こんなに大きいホイールの作業は、自転車屋を25年間やってる中で初めての経験でした。
組立依頼
2018-03-29
先週、組立依頼を受けたロードバイクを納車しました。
とても高価なカーボンフレームのため、BB圧入、ステアリングコラムや翼断面シートポストの切断、エアロバイク独特の内蔵ケーブルなど、非常に気を使う作業の連続でした。
お客さんは、かなり遠方からのご来店。
わざわざ私に組立作業をご指名いただき、大変恐縮してしまいました。