CYCLING

サイクリング画像

通勤、通学で人の行き交いが多い防府の街を過ぎ、その西を流れる佐波川を渡ると、防府バイパスからの国道 2号と合流して、道幅は一気に広くなりました。
昨年は、深夜に走ったこの辺りが最も気温が低く、かなり寒く辛い思いをした場所です。
明るい時間に走るのは初めてだったので、こんなところだったのかと、キョロキョロしながら走りました。

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時刻は、7時25分。
どんより曇った空は、全く晴れる気配はなく、ひんやりした空気にサイコンを確認すると、気温は 19度でした。
昨年の夜間、この辺りが 8度であった事を考えると、6月になってずいぶん暖かいなぁと思いながらペダルを回します。
出発前には、どんな種類のウエアー類を持っていくべきか悩みました。
これまでの走行中のウエアーは、下がニーウォーマーとレーパン二重。上は、夏用のメッシュアンダーに夏用のロングスリーブジャージ。
気温が低い時間帯は、その上からウィンドベストを着用していました。
気温が低かった昨年のことを考えて、アームウォーマと冬用アンダーも持参していましたが、結局最後までそれらを使うことはありませんでした。

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国道の右手に長沢池が見えると、防府市から山口市への境を越えた頃となります。
やがて、北側に並行してある山陽自動車道から分岐した高架が合流すると、それまで走っていた国道は自動車専用道路となり、ルートを県道335号に移して郡山の街に入りました。
早朝に徳山の駅前でパスタと菓子パンを食べたばかりでしたが、時計を見ると補給が必要なタイミングでした。そこでコンビニに寄って塩サバ弁当を購入。気分は 2度目の朝食でした。
昨年、下関まで走った時もまた、この小郡の街で補給を摂りました。小郡からは山岳区間となり、昨年は下関までの 3時間を無補給で走って、最後に軽いハンガーノックになりました。
その時は、最終地点が下関だったので問題ありませんでしたが、今年は違います。
小郡のコンビニで塩サバ弁当を食べながら、次の補給地点を検討しました。
時刻は、8時頃でした。そこで、2時間後の補給は、厚狭埴生バイパスの談合峠にあるうどん店になるだろうと予想しました。

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小郡の街を後にして、いよいよ本州最後の山岳区間に入りました。
約30キロにわたって峠道が連続します。
ひとつひとつは小さな峠なのですが、兵庫県から走ってきた脚にとっては厳しい上り坂です。
写真は、小郡を発って最初の上り坂が始まったところ。
昨年は暗くて、周囲の状況がよく分かりませんでしたが、今年は「なるほど、こうなっていたのか」と納得しながら、大きくカーブする高速道路のインターチェンジのような道路をゆっくりしたペースで進んで行きました。

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国道 2号線に合流すると、山口市と宇部市の境に位置する「おいはぎ峠」への、無情に真っ直ぐ伸びた上り坂が行く手に現れました。
夜を徹して400キロ近くを走って疲労している身体で、これからまだ200キロ以上走らないといけないという状況において、ダラダラと延々続く上り坂を前に進まないといけないと思うと、普通なら気持ちが切れてしまうところです。
昨年のように目的地が下関なら、「ここを頑張ればあともう少し!」と気持ちを奮い立たせることもできるのですが、目的地が熊本である今年はそうもいきません。
九州に入ってからは「冷水峠」という難所が待っているため、それを考えてしまうと熊本までの道のりは果てしなく長く厳しいものになってしまいます。
昨年、同じルートを下関まで走って、この状況は予想していました。

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この度のウルトラロングライドに向けてのトレーニングにおいて、短い距離ながら、しつこく坂道を上った理由は、まさにこの厳しい状況を想定してのことでした。
何度も何度も坂道を上ることで、脚力の向上を期待しました。そして、上り坂に対する気持ちをポジティブに保っていられるように、精神トレーニングも行ったのです。
私の仕事では十分に走り込める時間を確保しにくいため、40歳を過ぎてしまった今、さらなる体力の向上は望めませんでした。
疲労した身体に厳しいのは上り坂。しかし、ゆっくりであれば上れるテクニックの知識は持ち合わせています。
熊本まで走りきるために最も欲しかったのは、脚力や体力はもちろんでしたが、厳しい状況でも常に前に進む気持ちを維持できる強靭な精神力でした。

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坂道は、私を試すように何度も何度も現れます。
400キロ以上走ってるのですから身体的にはきつく感じました。しかし、精神的にはきつく感じず、むしろ次にやってくる坂を楽しんでいました。
写真は、最も急勾配に感じた吉見峠。サドルに座ってペダルを回すことができず、ダンシングで多くの体力を消耗しました。
しかし、気持ちをポジティブに保てたおかげで、この先まだまだ続く坂道へ向けて、ペダルを止めることなく走り続けることができたのです。

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宇部市と山陽小野田市の市境手前に分岐点があります。
予定では、右折して厚狭の街を通過する昨年と同じルートを考えていましたが、分岐点を前に気が変わり、そのまま直進して厚狭埴生バイパスを走ることにしました。
昨年もどちらのルートを走るか迷ったところでした。昨年に走ったルートは状況が分かるので安心感があるのですが、どうしても未走のルートも気になって、やっぱり走ってみることにしたのです。

昔から人が行き交いした街道というものは、人馬に優しいものです。ところが、山を削り、谷を埋めて、地形を無視して造られた現代の幹線道路というものは、エンジンを載せた自動車には都合よくても、人馬ならぬ、人と自転車にとっては優しくないのが常というもの。
さてどうなるかと、戦々恐々としてバイパスに突入しました。

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