業務日誌

健康じてんしゃ店の業務日誌です

2018

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2018–02–01

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交通事故

交通事故による自転車の修理依頼では、保険を通して物損事故として示談する場合、まず、自転車の被害状況を調べます。
そして、修理が可能なら、その見積書を保険会社に提示し、その内容で示談が成立できそうな段階で修理のゴーサインが出されます。
修理作業が完了してから保険会社に請求書を送付。
指定した金融機関の口座に修理代金が振り込まれるのは、それから数週間後となります。

2日前の火曜日のことです。
営業開始して間もなく、出張修理の電話がかかってきました。
「交通事故に遭った自転車の修理をお願いしたいので、自宅まで来てほしいのですが…」

この場合、お客さんは、被害者、加害者?
保険会社を利用するのか?
修理代金は、お客さんが立て替えるのか?
などなど、こちらの金銭的な事情があるのですが、交通事故で心穏やかでないお客さんに「お金」の話は口にしにくいのが実情です。

そこで、細かい事は聞かず、「今から直ぐ、そちらに向かいます」と言って、妻に店の留守を頼んで、お客さんの自宅へ車で向かいました。

10分ほどでお客さんの自宅に到着。
駐輪場に置かれていた自転車は、修理では直せない、つまり廃車ということが判断できました。
事故の被害者であるお客さんにその事を説明すると、「えっ、直りませんか…」と想定外の事実に驚かれた様子。
聞けば、購入されてから10年以上経っており、減価償却と過失割合を考えれば、お客さんにとって不利な状況です。

「せっかく来てもらったのにねぇ… とりあえず保険会社に出す見積書をファックスで送ってください。」

そう言われるお客さんに、出張料金、見積書の作成料金を請求すべきでしたが、私は何も言うことが出来ないまま店に戻りました。

それから 2日後の今日、そのお客さんが店に来店されました。

「娘から、こちらの自転車屋さんにお世話になったと聞きました。保険会社からお金は全額出ませんが、こちらで新車を注文します。」

2018–02–06

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女性のセンス

寒波おさまらず、ものすご~くのんびりした営業日が続いております。

発注していた残りのポストカードが入荷して、全 7種類が揃いました。
ポストカードの企画、制作、発注、それから展示まで、全てを妻がやってくれました。( 私は、見てるだけ~ )
「女性ならではのセンスが必要な仕事だから、油クサイ男の自転車屋の私には絶対に無理や…」と、壁面に展示されたポストカードを見て、そう思いました。

2018–02–11

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聞きたくない言葉

自転車の修理において、不測の事態といえば「パンク」です。
自転車に乗っている時、乗ろうとした時、タイヤの空気が抜けて乗れなくなったその時、人はその好ましくない事態をどのように思うのでしょうか?

若い女性のお客さんがパンク修理で来店されました。
修理を始める前に状況を聞き、タイヤの状態を手で確認したところ、チューブは問題ない事が予想できました。

「これ、パンクしていないかもしれませんよ」

私はそう言って、虫ゴムだけを交換して、空気を入れて様子を見てみてはどうかと提案しました。
しかし、お客さんは料金がかかってもよいので、しっかり調べてほしいと希望されます。
そこで、私はタイヤから出したチューブを膨らまして水の中に入れ、穴が開いていないか調べましたが、やはり穴は見つかりませんでした。
その事を女性のお客さんに説明すると、

「ありがとうございます。これで安心して自転車に乗ることが出来ます。」
と、とても明るい表情で感謝の言葉を口にされました。
お客さんにとっては不幸な出来事であったにもかかわらず、感謝の言葉を頂いて、私はとても驚いてしまいました。

次は、若い男性のお客さんがパンク修理で来店された時の話です。

クロスバイクの前輪タイヤは、完全に空気が抜けてしまっていました。
私は、空気で膨らましたチューブを水の中に入れて、穴から出る気泡を捜しました。
チューブの表面に目を凝らして、ゆっくり丁寧に調べましたが、なかなか穴を見つけることは出来ません。
「空気が抜けていただけだったのか…」と思った時、チューブの表面に付着していたひとつの気泡がゆっくり大きくなり、やがて表面からポンと離れていく様子が目に入りました。
それは、ものすごく小さな穴でした。

チューブに穴が開いた原因をタイヤの内側に捜してみたところ、髪の毛のような細い金属を見つけました。
「これがタイヤに刺さってパンクしたようです」
私は、その金属をお客さんの目前に差し出しました。
お会計の時、お客さんは私に尋ねられました。

「パンクを避けるために、私が気を付けなければいけなかった事はありますか?」

男性のお客さんが、自分に非があるかと思われている事に、私は驚きました。
「いえいえ、この度のパンクは避けられませんよ。運が悪かっただけです。」
私はそう説明するしかありませんでした。

予定外の出費があった時、人は不機嫌になるものです。
パンクの原因を「誰かのいたずら」と決めてかかる人も少なくありません。
実際、いたずらである場合もあるのですが、それは頭の片隅にしまって忘れて、自分の非を疑って、他人を疑わない、憎まないことが大切だと思います。

「やられた」と口にする人はいます。
自転車屋として仕事をする時、できれば聞きたくない言葉です。

2018–02–14

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旅行

妻と一緒に、四国は美波町へドライブ旅行に行ってきました…続きはこちら >>

2018–02–19

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感謝の言葉

ある日のことです。
自転車を押したおばさんが来店されました。
「ペダルが回らへん。誰かにやられた!」
と、かなり立腹された様子です。

ペダルを手に持って確認したところ、ガッチリ固定されて全く回りません。
それは、チェーンのトラブルであることが予想できました。
そこで、チェーンを全て覆っているカバーの開口部から中を覗いてみると、絡んだチェーンが見えます。
ガッチリと絡んで詰まったチェーンを苦労して取り出してみると、写真の箇所が破断していました。

切れたチェーンをおばさんに見てもらったところ、
「それ、いたずらや。やられたわ」とキツイ表情をされます。
さらに、経年劣化が原因で傷んだ他の箇所についても、「やられた」という言葉を繰り返されます。

チェーンの破断面を見れば、工具で切断した形跡はなく、何らかの強い張力による破断だと判断できました。
何度も「やられた」と口にするおばさんの様子から、「きっとこれまで、つらい経験をされて、人が信用できなくなったのかなぁ」と悲しい気持ちになり、人為的な原因によるトラブルではないと説明することができませんでした。

さて、切れたチェーンを取り出した後は、新しいチェーンに交換しないといけません。
そこで、おばさんに了解を得るために修理料金を話したところ、
「お金ないわ。まけて」との返事。
「えっ」と息が止まりましたが、
「とにかく直さないと自転車に乗れないでしょう。お金はいつでもいいから、修理しますね。」と言って、すぐに作業を開始しました。

私は、おばさんに「どうか人の優しさを思い出してほしい」と心の中で願いながら、新しいチェーンを自転車に取り付けました。
作業が終って、再び乗れるようになった自転車をおばさんに渡しましたが、あえて連絡先は尋ねませんでした。
残念ながら、その日、おばさんの口から「ありがとう」という言葉を頂くことは出来ず、その日から一週間経っても、おばさんは来店されませんでした。

私の自転車屋としての仕事は、人の役に立つためにやっており、それは感謝の言葉を頂いた時に 果たします。
おばさんが来店されない日々が続くと、
「人の役に立つのは難しい。お客さんに気に入られるために、媚びへつらっているのと変わらない偽善行為ではないか」と、自問することもありました。

チェーン交換から10日あまり経った日、おばさんが来店されました。
「あの時はどうもありがとうございました。助かりました。」
修理代金を支払われるおばさんは、あの日と違って、とても和やかな表情でした。
おばさんから感謝の言葉を頂いて、「あぁ、良かった。おばさんの役に立つことが出来た」と、私はとても嬉しい気持ちになりました

2018–02–28

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職業的良心

今日で 2月も終わり。
振り返ってみれば、防犯登録の依頼が多かったように思います。
それらは、インターネットの通販で購入された新車登録です。

最近、警察による自転車の防犯登録についてのチェックが厳しくなったように思います。
私の店が姫路駅近くにあるためなのか、無登録のために「警察から厳しく指導された」というお客さんの話をよく聞きます。
新聞の紙面にも、自転車の防犯登録の案内広告(写真)をよく見かけるようになりました。

インターネットでの自転車の個人売買が多くなり、その中には盗難車も少なくないと聞きます。
そのような状況では、これからますます防犯登録の重要性が高くなると思われます。

そこで重要になってくるのが、防犯登録を受ける側の仕事です。
盗難車とは知らずに新規登録してしまっては、防犯登録の意味がありません。
インターネット通販の新車登録では、お客さんの公的身分証明書と合わせて、自転車の保証書または販売証明書を提示していただく決まりになっています。
ところが、ほとんどのお客さんは、「自転車の保証書も販売証明書もありません」と言われます。
そのような場合、スマホで購入履歴の画面を提示していただいていますが …

インターネット通販では、スマホの画面を軽くタッチするだけで、安価で手軽に自転車が購入できます。
その中には、未完成のために、非常に危険な状態で店に持ち込まれた自転車も少なくないのです。
ケーブル類の通し方が間違っていたり、変速の調整が出来ていない自転車は当たり前。
ブレーキレバーの角度が間違っていたり、前輪が固定されていなかったり、重大な事故につながる可能性のある自転車もありました。

自転車は、「たかが自転車」ということで、「事故を起こすかもしれない」という認識が乏しい乗り物ゆえ、インターネット通販業者が、自転車の保証書・販売証明書などの書類を発行しなくても、それが問題にならないのかもしれません。

先日、自転車による死亡事故が大きく報道されました。
兵庫県、大阪府などでは、自転車保険等の加入を義務化しており、その動きは全国へ拡大していくと思われます。
自転車事故の報道や保険の義務化は、自転車に乗る全ての人への警告です。

そして、乗り手だけでなく、私たち自転車の販売業に携わる者に対しても、やがて職業的良心を問われる時が来るかもしれません。
調子の悪い「新車」を整備する時、それを販売した業者は、安価な自転車を供給することばかりに気を取られ、それを乗るお客さんの安全が後回しになっているように感じます。
自転車技士・自転車安全整備士といった資格は存在しても、はたしてそれが、お客さんにとって自転車を購入する際の動機のひとつになっているのか、ふと疑問に思うことがあるのです。

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